8 歳の時、ケイマン諸島でフリーダイビングをしていたスチュワートは、すぐ近くのリーフの陰にサメを見つけた。そのパワフルで完璧な生体に魅せられた彼は、その後、長く研究を続け、サメが海中生物の進化を形成してきたということを学んだ。群れになって泳ぐ行動、カモフラージュ、泳ぐ時の速さ、体の大きさ、コミュニケーションの能力等はサメから始まったのだ。美しく神秘的な彼らは4億年もの間、海の生物の中心的存在であり続けた。
スチュワートはカメラを手に海へ潜り、海底でサメと戯れ、その美しき生態を映し出すことで、“血に飢えた凶暴な怪物”というサメのイメージを覆していった。
しかし、サメの美しき姿を撮ることが目的だったスチュワートの旅は、グラテマラ領海でその方向を変えることとなった。サメはフカヒレのために捕らえられ、密漁は後を絶たない。サメを取り巻く暗闇を撮ろうとした彼は、密漁船に激突され、哨戒船に追いかけられ、最後には、ギャングや腐敗した司法システム、そして殺人容疑に追われ、命からがら国外に逃れることとなった。かつては捕食者であったサメが、今日では獲物となり、過去 50 年間で生息数が 90 %も減少している。自然のサイクルにおける数々の絶滅危機をくぐり抜けてきたにもかかわらず、サメは人間の欲のために近い将来地球上から姿を消してしまうかもしれない。海の生態系の中心にいるサメの絶滅は人間にとっても大変危険な事態である。勇気と固い決意を持ったスチュワートの驚くべき旅・・・それはサメを救うというミッションから、自分のそして人類の命をかけた闘いへと変わっていった
コスタリカではフカヒレのためのサメ漁が禁止されているにもかかわらず、コスタリカ産のフカヒレは世界中に出回っている。スチュワートが調査を続けた結果、マフィアとフカヒレ・ビジネスのコネクションが浮かび上がり、内部告発者の助けを借りて、コスタリカのサメ漁業の調査に乗り出した。そして、禁止されているはずのフカヒレ産業がコスタリカ沿岸に多く存在していることを暴き出した。
捕獲されたサメはヒレだけを切り取られ、胴体を海に捨てられる。捨てられる時、多くのサメはまだ生きている。ヒレがないので泳ぐことができず、そのまま長い時間をかけて失血死する。フカヒレ漁ではサメの身体の 95 %が捨てられるのだ。
ここ 10 年フカヒレの需要が著しく高まり、漁業技術の進歩と相まって、フカヒレ漁が増加の一途をたどっている。専門家は、毎年1億頭以上のサメがヒレのために殺されていると推察する。
銃やマフィアは、スチュワートが直面した危険のほんの一部である。感染経路は不明だが、撮影中にリンパ系の病気に襲われ、脚、ともすれば命まで失うところだった。海の中のドキュメンタリーを撮るために来たのに、水中撮影はまったくできていなかった。その上、命を失うかもしれなかった。 1 週間入院して、ようやく快復した。スチュワートは運がよかった。
ここまでやってきて、製作を中止する気はまったくなかった。なんとしてでもコスタリカへ戻りフカヒレ漁を止めさせるつもりだった。再びコスタリカに向かった彼を待っていたのは、想像もできなかった状況だった。フカヒレ漁と不法密漁に反対する人々がデモや集会を行っていたのだ。コスタリカの人々はサメを救うために声をあげ始めた。
スチュワートは故郷カナダへ戻り、フィルムの編集をスタートした。とはいえ、その前に旅行中に罹った病気を治さなければならなかった。デング熱、西ナイルウィルス、結核。闘病生活は 1 年に及んだ。そして、その間にシャークウォーターの構想ができあがった。
スチュワートはそれから 4 年かけてフィルムを完成させた。撮影したフッテージは 400 時間以上、ロケ地は 15 カ国に及ぶ。
困難は数えきれないほどあったが、スチュワートは海の中の美しい映像とジェフ・ロマによるオリジナルサウンドトラック、この分野における専門家のインタビューから、初めてのフィルム、『シャークウォーター』を完成させたのである。
監督・脚本・制作:ロブ・スチュワート
エグゼクティブプロデューサー:サンドラ・キャンベル/アレクサンドラ・スチュワート/ブライアン・スチュワート
撮影:
ロブ・スチュワート
水中撮影:
ロブ・スチュワート/ダディ・ハンナ
編集:
マイケル・クラーク/リック・モダン/チャック・ミラー/ジェレミー・スチュワート
音楽:
ジェフ・ロナ
2006年/カナダ映画/89分/カラー
提供:
レイドバック・コーポレーション
ポニーキャニオン
配給:
グラッシィ
後援:
カナダ大使館
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